ドメスティック・ラブ

 え。
 さとみんの言葉に慌てて視線を戻すと、こちらを見ていたまっちゃんと目が合った。思わずかっと頬が熱くなる。
 いや本当によねみー見送ってた時と違いがある訳じゃない。宴会でよくある光景だよなあと眺めていただけだってば。変な勘違いしないで欲しい。

 まっちゃんは私をしばらく見つめるとグラスを持って立ち上がり、座ったメンバーの間をすり抜けながらこちらに向かって歩いて来る。

「主役発見。今ちゃん、彼女の写メないの?」

 すぐそばまでやってきたまっちゃんは、今ちゃんに向かって声をかけながら私の頭を軽くポンと叩いて、そのまま隣に座った。まだ撮ってないんですという今ちゃんに、じゃあ次までの宿題ななんて答えながら、何も言わないまま私が手に持っていた生搾りグレープフルーツサワーのグラスを取って一口飲むと、そのまますぐ手に返して来る。
 一連の動きを黙って見ていたまりっぺとさとみんが感嘆の声を上げた。

「やる事がナチュラルイケメンー!タイミング絶妙ー!」

「……まっちゃんて派手さはないけどこういう所テク持ってるなって感じだよねえ」

 二人して何なのもう!
 彼女達の言葉の意味を分かってるのか分かっていないのか、当のまっちゃんはしれっとした顔で焼酎を飲んでいる。こっそり先輩の方にも目をやったけれど、まっちゃんの移動を特に気にした風はなかった。

「え、何が?何のテクですか?俺にも教えて下さいよ」

「今の今ちゃんには必要ないの。彼女と別れて次行く事があれば教えてあげるわ」

「ちょ、折角出来たばっかなのに縁起でもない事言わないで下さい!」

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