ドメスティック・ラブ
……『年の割には』。私もまっちゃんと一つしか違わないんだけど……というのは彼女達にはあずかり知らぬ事だろうし、とりあえず気づかなかったふりをしておこう。
「ミカちゃんなんか、まっちゃんのタイプが綺麗なお姉さん系って聞いてめっちゃイメチェンしたって聞いたよー」
誰だミカちゃんて。
っていうか『綺麗なお姉さん』。
まっちゃんがいつそう言ったのかは分からない。でもその言葉を聞いて、私が思い浮かべる人物像なんて一人しかいない。少なくとも普段の私はそういう形容をされるタイプの人間じゃない。
今日みたいな格好、梶尾先輩なら板についてるんだろうな。
「ミカちゃんここの卒業生でまっちゃんが担任だったんでしょ?今でもめっちゃアピールしてるもんね!」
「さっき今朝松岡先生の寝癖直してあげたんだってニコニコしてたよ、全然隠す気ないよねー」
聞いてる限りミカちゃんというのは母校で教師か何かをしている元教え子らしい。寝癖が直ってたのはその子のお陰って事ですか。
女子高生って自他問わず恋バナ好きだよね。十数年前は自分もそうだったんだからそれくらい私にだって分かる。まあ新婚担任の嫁とか見ちゃうとついはしゃいで色々言わなくていい事まで言っちゃう気持ちも分かる。
そしていくらなんでもまっちゃんの性格的に教え子の生徒とどうこうなるなんて思わないけど、若い女の子に迫られてると聞いて嬉しいか嬉しくないかと言えば断然後者な訳で。でもそれを彼女達の前であからさまに顔に出すわけにもいかないし。
「こら、嫁の前で変な事言うなよ」
「あっ、ごめーん。でもそれくらいモテちゃうまっちゃんを射止めるなんて奥さん凄いねって話だよっ」