ドメスティック・ラブ
「はい、食べられる所まで食べて」
私が差し出したトレイの上に乗っているのは梅粥だ。
「……千晶が作ったのか?これ」
「すみません、レトルトです……」
いや、本当は作ろうかなと思って昨日親に電話してお粥の作り方を聞いてみたりしたんだけど。シミュレーションしてみても上手く出来る気がしなかったので、無駄に材料と時間を消費するよりは、と真空パックになった物を買って来た。お皿に開けてレンジで温めただけの代物だ。
ベッドに腰掛けたまっちゃんがちらりとこちらを上目遣いで見た。
「……あーん、とかしてくれないの」
「……っ!」
いきなり何を言い出すかなこの人!まっちゃんそういうキャラじゃないのに、さっきの我儘と言い熱に浮かされてるんじゃないの?!
マスクをしていたせいで多分顔が赤くなっているのを隠せるのは幸いだった。
「そういう事言える状態なら自分で食べられるでしょ!」
「冗談だよ、冗談……いただきます」
軽く笑うと、まっちゃんが木製スプーンを手に取る。
お粥を口に含んだまっちゃんは眉間に皺を寄せたままゆっくりとそれを飲み込んだ。
「喉痛い?無理に喋らなくていいよ」