ドメスティック・ラブ
そして今日。午前中の挙式とお昼の会食を終え、その後市役所に婚姻届を提出に行った後で一度帰って着替えてから、夜になった今現在学生時代からの行きつけのダイニングバーで、友人達がささやかなパーティーを開いてくれていた。
仲間内での結婚とあって周りは大盛り上がりだし、皆とお酒を飲むのは楽しかったけれど、正直私はぐったり疲れ切っていた。だって昨日は夜こそ実家で独身最後の時間を過ごしたけれど、日中はその日にしかねじ込めなかった引っ越しで一日中バタバタしていたし。今日も早朝から式場で着付けやらリハやら、休む間もないくらい忙しかった。しかもウエディングドレスというやつは、見た目の優雅さとは裏腹に着ていると本当に窮屈で重いのだ。おまけにチビの私は無駄に背の高いまっちゃんに合わせる為にストームが四センチもある靴を履かされ、不自然な歩き方をしていたので全身から筋肉痛の気配がする。
昼の会食以降何も食べていなかったのに、食べるより先にシャンパンをはじめにビールやワインを流し込んだのが失敗だったんだと思う。あっという間に視界が回りはじめ、頭が重くて首が支えきれなくなった。テーブルに顔を乗せると、その冷たさが心地良くて起き上がる気になれない。瞼も重くてもう眼が開けられなかった。
だって皆に冷やかされながら祝われる訳だし、その後の事を考えても素面じゃ絶対無理だと思ったんだから仕方ない。
「あーあ、しま潰れちゃった。もう、皆弱いの分かってて飲ますんだから……」
多分これは私の隣にいたさとみんの声だ。彼女の手が乱れた私の髪を直してくれている気配がする。
「今日のはしまっち本人が飲みまくったんでしょ。でもまあいいよね。今度からはまっちゃんが連れて帰れるんだから」
「今度からって言うかそれ今までと変わらんだろー」
今日は先輩後輩も来ているし、少し離れた所から聴こえる声だともう誰が言ってるんだか分からない。脳が判断する事を放棄していて、皆の笑い声がふわふわと頭の中で反響する。