ドメスティック・ラブ
電話の向こうでさとみんが笑う気配がして、何となくほっとする。
まっちゃんが寝ていて部屋にいないのをいい事に、通話したままソファーの上に足を上げてだらしなく横になった。
「仕事忙しいみたいで毎日帰るの遅かったし、疲れが溜まってんじゃないかな。どうにかしてあげたいけどこればっかりは口出し出来ないしねー」
『まあ確かに高校教師って色々大変そうだよね。でも仕事に口出しは出来ないかもしれないけど癒してはあげられるでしょ。てか帰ってしまの顔見たら多少の疲れなら吹き飛ぶんじゃない?』
そんな微笑ましい新婚夫婦像とは程遠い現実。
帰ってきたら半失敗の料理が出来上がっていたり調理途中だったりするので、なんだかんだまっちゃんに仕上げてもらったり味付け直してもらったり。お風呂入ろうとしてるのにお湯を張り忘れてたりとか、そして何より帰りを待ってるどころか先に寝てる時もしょっちゅうある。どちらかと言うと、癒すというよりは余計に疲労を与えている気がしなくもない。
正直に実情を暴露すると、それでもさとみんは疑問の声を上げた。
『そうかなあ……まっちゃん前にしまっちがちょこまかしてんの見ると癒やされるわーって言ってたよ』
「前っていつ?」
『結構前だよ。先輩と別れた直後くらいじゃなかったかな』
「かなり前じゃん。そりゃたまに会って傍から見てるだけの頃はいいけど、一緒に暮らしてる今はそんな悠長な事言ってられないんじゃないかな……」
『いーんだよ、しまはいつものしまで。そんなしまっちの世話を焼くのがまっちゃんは生き甲斐なんだからさ』