ドメスティック・ラブ
「ごめん、やっぱり妹みたいにしか思えないみたいだ」
妹みたいにしか思えない存在と手をつないでキスしてセックスしたのかよ、というツッコミは野暮なんだろうな、やっぱり。
まあ私にも責任はあるんだと思う。
大学入学して三ヶ月。授業にサークル活動、新しい友達。色々な事が新鮮で好奇心をくすぐるので、彼氏ばかりを優先出来なかった。それらは四年生の彼には今更な事ばかりだし、むしろ彼は就活で荒んだ心の癒やしを私に求めていたらしいのだけれど、新入生の私には就活の辛さなんて分からない。付き合い始めたばかりだというのに、お互い忙しいんだからと割り切って無理に恋人との時間を作ろうとはせず、あれこれやっていたらこの結果だ。
正直な所、ショックだとか悲しいだとかそういう気持ちは薄い。むしろ、ああやっぱり、と思っていたりする。
サークルに入ってすぐ、凄く良くしてくれて授業の事やサークル活動の事を色々教えてもらった。宴会の日は遅くなったら送ってくれたりもした。受験直前に高校時代の彼氏と別れたきりフリーだったし、いい先輩だと思ったので付き合おうと言われて何となくOKしたけれど、この人の事を本気で好きだったかと問われたらきっと即答は出来ない。
甘えて癒やして、常にラブラブオーラ全開で。そんな恋人になれなかった私に彼が戸惑っているのも、「思ってたのと違った」と考えているのも何となく伝わっていた。だから、遠からずこうなるのも何となく予感していた気がする。
「先輩と後輩の関係に戻れないかな」
どちらのグラスも表面についた水滴が流れ落ちて、紙のコースターに染みが出来ている。
元々残量が少なくなっていた私のアイスティーは、飲むのをやめると氷が溶けた分彼のアイスコーヒー以上に薄くなっていた。
「分かりました」