ドメスティック・ラブ

 先輩と別れた事を同期の皆に伝えたら、『フラれたしまっちを慰める会』という名目で遊びに行く事になった。どこに行きたいか訊かれたので遊園地と答えて、前期の試験休みの日に都合のついたメンバーがここにいる。
 とりあえずしまっちの乗りたい物を、と言われて入園早々絶叫マシーンを立て続けに選んだら、湿度と気温の高さも相まっていつの間にか皆の顔からだんだん精気がなくなっていた。

「もう一回行くなら私パスー、ちょっと休憩させて」

 そう言ってみっこがそばにあったベンチにぐったりと腰を下ろす。

「俺もこの暑さの中さすがに四回目はもう無理。このペースで三半規管にダメージ喰らい続けたらその内昼飯吐く」

「私も次はいーわ……待ってるからしまっち一人で行ってきたら」

 皆が次々に座り込む中、私は唇を尖らせた。

「一人で乗ったって楽しくないじゃん。折角フリーパスなんだし誰か一緒に行こうよー」

「何だよしまっち、慰める必要なんてないくらい元気じゃねーか」

 隣でよっしーが呆れた顔をした。
 いやだってフラれたって報告したら自動的にこうなっただけで、落ち込んでるとか悲しんでるとか一言も言った覚えないし。どうせ慰める会なんてのは皆で遊ぶ口実の一つでしかなかったはずだ。

 結局気分が悪くなるという面子を除き、あと一回なら乗れない事もないという四人がじゃんけんをして、敗者となったまっちゃんが付き合ってくれる事になった。残りのメンバーはカフェテリアに移動して休憩しつつ待っていてくれるらしい。

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