ドメスティック・ラブ

 最高高度が話題になる程高低差が激しいジェットコースターで、海側に大きくせり出している為空を飛んでいる気分を味わえるというフライングドラゴンはこの遊園地の目玉で一番の人気アトラクションだ。夏休み前、週半ばの平日昼間とはいえ結構な人が並んでいる。

「あっつー……くっそー、皆涼しい所で休んでるってのに何で俺だけ……」

 まっちゃんはぶつぶつと文句を言いながらも律儀に列に並び、ここに来る前に買い足して来たペットボトルのスポーツドリンクを口に運んでいる。
 あと四・五メートル程列が進めば日陰に入れるけれど、今立っている位置は少し西に傾いた午後の日差しが暴力的に横殴りで照りつけて来るのでとにかく暑い。

「じゃんけん負けたんだから文句言わなーい。でも確かに暑いわ」

 天気が良かったので、今日の私は髪が首筋に張り付くと暑いだろうと思い、頭の上で髪をお団子にしてきた。ただその代わりこの髪型だと首が無防備に日差しに晒される。朝塗った日焼け止めだけでは心許ないので、仕方なくマフラー型のタオルを売店で買って首にかけているけれど、頭頂部は当然暑かった。ツバの広いストローハットを被って来ていたみっこが圧倒的に正解だ。
 汗をかいてからコースターに乗って風を切ると爽快だけれど、乗っている時間に比べて並んでいる時間の方が長いのはもうどうしようもない。

「しまっち、ここめっちゃ赤いんだけど、これ日焼け?」

 遥か上から私を見下ろすまっちゃんが、眉を顰めながら人差し指で私の耳の上の部分を突付いた。触られた瞬間ひりっと痛みが走る。

「痛っ……何、赤くなってる?」

「めっちゃ赤い」

「ええー、こんな所まで日焼け止め塗ってなかったからなあ……」

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