ドメスティック・ラブ

 まあ確かにわざわざ彼女のいる男とどうこうなろうなんて全く思わないけど、どうやら見透かされているらしい。

「しまって同期の事そういう目で見てないだろ。先輩の前と俺らの前であからさまに態度違ってたもんな」

「えっ、そんなに違う?」

「なーんか優等生ぶってるって言うか、今日みたいな自己主張全開には絶対ならない。だから先輩もその外面に騙されたんじゃないの」

 まっちゃんの言っているのは先日別れた彼の事だろう。別に意図的に態度に差をつけてたつもりはないし、彼の前でだけいい顔をしていたとかいう訳ではないけれど、緩いサークルでもそれなりの上下関係はあるので、同じ新入生ではなく先輩達を相手にするとさすがに私もそれなりに取り繕ってしまう。

「あー、皆の前だと居心地良過ぎて必要以上にリラックスしてるからかなあ。多少なりとも意識してる相手の前では簡単に素は出せないかも……だから後で思ってたのと違うとか言われちゃうんだけど」

 まだ付き合いが浅い割に、同期の仲間とは本当に気の置けない関係が築けている。いずれ先輩ともそうなれるかな、と思っていた所であっさりフラれてしまったのだから仕方がない。

「先輩と別れたのってそういう理由?」

「んー、まあ多分それもかなりある。でも正直特に悲しいとか悔しいとかないんだよね。本気になる前に終わっちゃった感じで」

「……じゃあ次は素を見せられて、ついでにそれでも引かない男と付き合えよー」

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