ドメスティック・ラブ

 御尤もな指摘。ただ問題はそれをどうやって事前に確認するかだ。
 先輩にしたって、当初は包容力があって懐深い人だと思ってたのにこういう結果になっちゃったし。

「そうだねー……てか当分いいわ。こうやって皆と遊んでる方が楽しい」

「そういう事言ってるとあっという間に大学四年間終わるぞ」

「入学したばっかりなのにそういう事言わないでよ。あー彼女いる人は余裕があっていいですね!」

 こんな事を言っていたけれど、結局まっちゃんも夏休みが終わる頃には彼女の方が大学が違ってお互い別の世界がある事に耐えられなくなったとかで破局していた。その後しばらくしてバイト先の後輩とかいう子と付き合ったけど半年も経たない内に別れ、三年生になる頃には梶尾先輩がいいと言い始め、付き合いだしてからは五年以上続いたはずだ。
 私の方はと言えば友達の紹介で知り合った他大学のスポーツマンとはこれまた半年ももたなかったし、三年の終わり頃になって同じゼミの同級生と付き合ったけれど、卒業して就職してからすれ違いが続いて別れた。酒の席で三十歳までにどうこう言ってまっちゃんに迫る少し前の事だ。おまけに去年の初めには合コンで知り合った人と少しいい感じになったと思ったら相手が既婚者だった事が発覚し、フェイドアウトしようとしたら逆に変に粘着されて家族友人を巻き込んで大騒ぎした。

 二十代の私の恋愛はやたらと経歴だけは豊かになったけれどどれも長続きせず、まっちゃんの『尤もな指摘』もあまり生かされてはいなかった様な気がする。


*   *   *


 年の瀬も迫った十二月最後の週末。雪こそ降ってはいなかったものの、気温は街中に比べるとグッと低い。おまけに辺りは一面茶色く刈り取られた田んぼで風を避ける手立てがない。少し離れた場所をぐるりと山が囲んでいるけれど、潔い程他に何もない場所だった。
 入る前は寒い寒いと喚いていたけれど、温泉に浸かって火照った頬には外の冷気が心地良い。

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