キミの瞳に
さっきまで微笑ましく感じていたのが嘘かのように一気にその感情がなくなった。
俺に背を向ける春は全く俺に気づいていない。
仕方ないことだけどそれさえ今は俺の心を掻き乱した。
春の手首をとってグイッと腕を引っ張った。
「…なにやってんの?」
自分ながらにいつもより随分低い声が出たと思う。
春が俺の方を見る。
腕を引っ張ったのが俺だと気づいた途端春の顔がどんどん青ざめていく。
普段ならおもしろいと笑うのかも知れないけど今の俺にはそんな余裕がなかった。
「買い物じゃなかったの?」
俺が春にそう聞けば、春が返事をするよりも先に男が口を開いた。
「春の知り合い?」
目の前の男は俺と春を交互に見る。
「あ、うん…っ…」
知り合いで確かに間違ってはない。
ただ、彼氏だと言わない春に少しイラついて手首を掴む力が強まった。