運命の人はいかがいたしますか?
 五時。喧嘩別れっぽく別れてしまったエルのことが気になっていた。

 今日は仕事を早めに進めていたため、帰れそうだ。帰ろうとしていると美優が杏のデスクに近寄ってきた。

「杏さん。もしかして犬って昼の彼のことですか?」

 ドキッとして美優の顔を見ると意味深な笑みを浮かべて、にこやかに手を振った。

「じゃ。お先で~す。」

 女の勘ってあなどれないと残された杏はドキドキしていた。


 家に帰ると誰もいなかった。テーブルにあるメモに気付く。

「ご迷惑をおかけしてすみませんでした。先輩の天使のところに泊めてもらいます。智哉ガブリエル。
 鍵はドアの郵便受けに入れておきます。」

 メモを手に取ると「智哉ガブリエル」と書かれたところを、そっとなぞった。

「バカね。自分の方が弟なんて思えてないくせに。」

 そうつぶやいてソファにもたれかかった。
< 23 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop