運命の人はいかがいたしますか?
「ところで…やっと圭祐さんのことをクリアに出来ました。
 どなたかいい方はいらっしゃらないんですか?」

 おいおい。こっち側で探すわけ?

 誰かいい人を連れてきたり…というか結婚したい男の人も女の人も登録している膨大なデータから理想の人を探させてくれたり、そういうものじゃないの?

 当たり前の疑問が大量にあふれそうな頭になっても、そうだった…この子ダメな子だった。と反論することすら、面倒になる。

「そうねぇ。身近なところだと…春人かなぁ。」

「誰です?それ?」

 自分で聞いておいて少し不機嫌そうな声を出したエルに、何が気に入らないんだろうと、にらみたい気持ちを抑える。

「ほら。昨日のお昼に…圭祐と会った後に職場の人に会ったでしょ?」

 あぁという顔をするとエルは首を振った。

「あんな人ダメです。」

「あんな人って。どうしてよ。いい奴よ。」

 杏の言葉に余計に不機嫌そうな顔をして、首を振る。

「ダメです。だって…えっと…女の人と一緒にいましたよ!」

「美優ちゃんのこと?大丈夫よ。あの子も同僚だし。」

 杏の反論も受け付けない感じで、また首を振る。

「とにかくダメです。もっと他のいい人にしてください。」

 誰よ。もっといい人って。文句を言うなら自分で目ぼしい人を連れてきてよ。

「だいたい、おかしいこと言ってるの分かってるの?
 運命の人を探すって言って何もしないくせに、名前を出せば反対する。
 そもそもエルがずっと一緒にいたら、男なんて寄ってこないわよ。」

 杏のもっともな意見にエルは何も言えないようだった。黙ったままだ。

 ちょっと言いすぎちゃったかな?と様子をうかがうと思いついたようにエルが口を開く。
 ぱぁ〜と顔まで明るくして。

「変な男除けになるってことですよね。うんうん。いいことじゃないですか。」

 はぁ。ダメだこりゃ。この子、おかしいんだもの。
 それにどうせ私が誰か連れてきたって娘を持つ父親のように反対するに決まってる。

 諦めた杏はもっともらしいことを言った。

「だいたい別れたばっかりだし、まだ男はいいわ。」

 本心でもあった。ちょっと疲れちゃったし。

 そんな杏の言葉に一瞬嬉しそうにしたエルに、これで当分ここに居座れるとでも思ってるのかしら。
 やっぱりダメ男だったかしらね。そう思って苦笑した。

「今日のお昼はどうするの?」

 杏がトーストをかじりながら隣を見るとエルが遠いところを見つめるようにじっと何かを考えていた。

「どうしたの?エル。」

「あ、いえ。今日のお昼は用事があるので…。さぁ杏さん行かないと遅刻しますよ?」

 上の空のエルに追い立てられてアパートを出た。
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