運命の人はいかがいたしますか?
 一方、杏は怒りながら歩いていた。

 分かってる。忠告されなくても分かってる。エルは仕事で、私はそれ以上を求めちゃダメだって。

  最近のくせでつい早く仕事を終わらせてしまう杏は必要以上に仕事に励んでいた。
 五時になっても帰ろうとしない杏に美優が声をかけた。

「杏さん帰らなくて大丈夫ですか?」

「えぇ。美優ちゃんお疲れ様。」

 微笑むこともなく、そう言った杏に、あちゃー。元通りかぁ。と心配そうな視線を送る。

 見た目や表面的にはクールな杏でも、本当は優しいこともずっと前から知っていたし、それで良かったのだけど…。

 あのイケメンくんとうまくいけば杏さん幸せそうなのになぁ。

 春人が杏のことを気にしてるとか、そういうことは置いといても、杏をあそこまで変えられる人はいないだろう。

 純粋に美優は杏に幸せになってもらいたかった。
< 44 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop