運命の人はいかがいたしますか?
 エルの前に行くと杏を見て目をキラキラさせた。

「杏さん。とっても可愛くて、すごく似合ってます。」

 ストレートな物言いはいつものことだったが、杏は頬をうっすらと赤く染めてうつむいた。

 がらじゃないと思っても可愛くてつい買ってしまったワンピース。
 かわいい花柄でふわっとしたシルエットは自分のキャラじゃないのは分かっていた。

 それでもエルなら可愛いと言ってくれると思っていた。

 そう思って着てきたのに実際に言われると、やっぱり少し恥ずかしい。
 首に巻いたストールで顔を隠す。

「寒いですか?」

 心配そうにのぞきこむエルに、ううんと首を振ると「カーディガンも着てるから大丈夫」と笑顔で答えた。

「杏さん。こういう服あんまり着ないですよね。そうだ。最初はかわいい服を見に行きましょう!」

 ほらとエルが手を差し出した。

 意味が分からない杏は「お手ってこと?」と手を上に乗せた。

「もう杏さん!犬じゃないんだから。僕が杏さんをペットに出来るなら毎日散歩に連れてちゃいますよ。」

 手の上に乗せた手を握ると、まるで恋人のように手をつなぐ。

 いやいや。エルは知らないだろうけど、ずいぶんと長い間、あんたは私のペットのようなもんだったのよ。
 心の中で憎まれ口をたたいてドキドキを追い出そうとする。

「ほら。こういうのも本番の時のために練習しとかなきゃ。」

 その言葉にドキドキが少し収まると、杏も割り切って楽しもうとつないだ手を放す。

 一瞬エルが「え?」とした顔を楽しそうに見て、エルの腕に自分の腕をからませた。

「ほら。恋人同士なら腕を組んだっていいんでしょ?」

 杏さん…とぼやっとしているエルに「ほら行こう!」と引っ張った。
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