運命の人はいかがいたしますか?
「今度は電車に乗りましょう」と、電車に揺られていた。

 行き先は海辺のデートスポット。

 杏が「近いから立ってましょう」と言ってドアの付近に立つと、何も言わずちゃんと壁側に杏を立たせて、混み合ってくる人混みから杏を守るように立った。

 エルって常識がないかと驚くこともあるのに、紳士だったりするのよね。
 案外モテたりするのかもなぁ。

 そんな考えが頭に浮かぶとズキッと心が痛かった。

 海辺をぶらぶらと歩く。特に何かするわけでもないのに、どうしてか楽しかった。
 海辺の風に杏の髪が揺れると、その髪をエルが耳にかけてくれた。

「エルってこういうことサラッとできちゃうのよね。」

 ドキドキしている自分に馬鹿らしくなって、不満そうに声を漏らす。

「え?いけませんでした?」

「モテそうだし、案外遊んでたのかなぁって。」

 つい本音が口を出て、しまったかなと思いつつ、横目でエルを観察した。

 杏の言葉に心外だ!という顔をしたのがよく分かった。

「僕は杏さんだけだって言ってるでしょう?」

 だから誤解しそうな言い回しやめてくれない?杏さんだけの担当ってことでしょ。

 私に運命の人をみつけるための。
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