運命の人はいかがいたしますか?
「いいでしょ?今日はお休みだから、ゆっくりしようよ。僕は杏さんが足りないんです。」

 私が足りないってどういうことよ。補充式の何かなのか、私は。

 なんとかもがいて腕から抜け出すとベッドの端に逃げた。

「こっちに来てください。無理矢理するのは嫌なんです。」

 あ、出た。オオカミに豹変しちゃうよ発言。
 そんなこと言ったって動揺しませんよーだ。

 心の中で悪態をついても、結局はまた腕をつかまれて倒された。
 そしてそのままエルの腕の中に舞い戻るはめになった。

「お休みくらいまどろんだ時間を過ごしましょうよ〜。」

「まどろめない。悪いけど私はまどろめない。」

 エルの腕の中でまどろめるわけない。

「じゃまどろめなくてもいいからここにいてください。」

 おかしい。お互いに起きてるのに向かいあってベッドで抱きしめられてるなんて。
 今までさすがにここまではなかったはず…。

「フフッ杏さん固まってて可愛い。」

「そりゃ私はエルと違って慣れてないもの。」

「憎まれ口も可愛いです。」

 今日はどうしたというのだ。理由もなく、しかもまだ朝だというのに甘々だ。

 だいたい朝じゃなくても甘い雰囲気になっていい間柄じゃないはずだけど。

 動揺している杏はエルの手がまた透けていることに気づかなかった。
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