運命の人はいかがいたしますか?
第37話 手紙
 何も聞けなくなってしまった杏に、おじいちゃんはお茶のお礼を述べて帰って行った。

 一人アパートにいる杏は全てが夢のような気がしていた。

 天使なんていう変わった子…。そんな子がいたのかな。そんな気持ちになる。

 そういえばお休みしたんだっけ…仕事。休みならゴロゴロ過ごしたっていいんだよな。
 と何もやる気がせず、ベッドに向かった。

 ベッドには確かにそこに誰かが寝ていたあとがあって、その光景に胸がズキッとした。
 いつもエルが寝ていた壁側の方へもぐりこむ。

「エル…。」

 やっぱり悪い夢よ。エルがいなくなっちゃったことが夢なのよ。

 きっと大掛かりなエルのいたずらで、笑いながら部屋に入ってくるの。
 騙されちゃって杏さん純情なんだからって。

 それで怒る私にやり過ぎちゃった?ごめん…。って抱きしめるのよね。きっと。

 その情景が手に取るように思い浮かんだ。

 余計に寂しくなって布団を抱きしめると、ふわっとエルの香りがする。
 今にも杏さんって声が聞こえてきそうなのに…そう思って寝返りをうつ。

 ん?何か…ここにあるような…。

 杏は起き上がると違和感を感じた部分を探った。
 見ただけでは分からないが、触ってみるとシーツの下に小さな段差があった。

 シーツをめくって確かめると封筒が置いてある。

 心臓が飛び跳ねるのを感じながら、急いで開けようとするが、手が震えてなかなか思うように開けない。

 やっとの思いで開くと中には何度か見たことのある文字が並んでいた。
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