運命の人はいかがいたしますか?
 そんな二人の様子に呆れ顔の美優が春人の隣を歩く。

「いい加減、杏さんは諦めた方がいいんじゃないですか?
 それよりも近くにもっといい女がいるって気付きませんか?」

 美優がアピールするように少し背伸びをした。

「そんな女がいたらとっくに目移りしてるよ。」

 全く言っている意味に気付かない春人に、はぁ。とため息をついて質問する。

「どうして杏さんがいいんですか?仲のいい同期って感じじゃなかったですか?」

 だから見落としてた…。まさかそこに落とし穴があるなんて。

「そうだな…。確かにどっちかっていうと男同士って感じだった。気楽に話せるしいいやつって感じで。」

 楽しそうに声を弾ませて話す。本当にいい関係だったのだろう。

「だったら…。」

 美優がためらうように反論する。

「たまたま、すっげー可愛い顔をしてるとこを見ちゃってさ。
 どうしたんだって声をかけたら…。」

 フフッと優しく笑う春人の顔に美優はドキッとする。

「犬だってさ。飼ってた犬のこと思い出してたって。」

「犬…。あぁ。それなら前に外で杏さんと一緒にいた長身のイケメンくんのことですよ。」

「ええ!あれなの?犬だって…。それに弟じゃないのか?あいつ。」

「最近犬を預かったって言ってたらイケメンくんと一緒にいたからあれは同棲してるって感じですね。
 弟のわけないじゃないですか。」

 確かに外で会った時の二人の様子は親密そうだった。
 そいつが会うたびに自分に敵意むき出しなのも、ひしひしと感じていた。

 そして杏のそいつといる時の顔がまさに春人が見た可愛い顔と同じだった。

「でも俺が見たのはずいぶん前だぜ〜。あの時は犬だ。絶対。」

「でも今は犬じゃなくて男いますよ。それにお二人はとってもお似合いですし。」

「…。 どっちの味方だよ。」

「もちろん、杏さんに決まってます。」

 杏さんが春人さんを好きな素振りがあるんだったらすぐにでも諦める。
 だって絶対に敵わない。

 だけど…イケメンくんといる時の杏さんを見ちゃったら…。なんて言うのか…そう。
 あれこそが運命の相手。
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