運命の人はいかがいたしますか?
第41話 秘密の話
杏は月に一度だけエルとランチをしたレストランに行っていた。
同じ席で同じものを頼む。馬鹿みたいと自分で思うのだけど。
それでもあの日、エルが消えてしまった日から毎月欠かさず来ていた。
きっとあの時にはもう堕ちていた。
だって私たちはりんごを食べたんだもの。アダムとイブのりんごを。
天にも届きそうな大木の下で。
そして今から向うレストランの名前は「Heavenly」だ。
レストランに行くとその席はすでに他の人が座っていた。
背が高くスーツ姿のその人はレストランに似つかわしくない豚カツ定食を食べていた。
確証があったわけじゃない。
ほとんどがただの願望で…だけどそうじゃなきゃおかしいじゃない。
だって私は明日には三十歳を終えてしまう。
「エル…。」
そうつぶやくとその人は顔をあげた。
「え?」
変わらないその顔は人畜無害そうな、それでいて実はオオカミを隠している顔だった。
「ううん。松永智哉。」
「ど、どうして僕の名前を?」
驚くその人は鞄と資料の入った紙袋を座っていない椅子に置いていた。
あの時と同じ…。
微笑みながらそれをどけるとその席に座る。
感動の再会だもの。泣いたりしないわ。
そう思っていたのに涙が溢れる。
杏の向かいに座るエルはあたふたしているのが、うつむいていても分かった。
「あの…。よく分からないけど、泣かないで。あなたが泣いていると何故か胸が痛いんだ。どこかでお会いしたような…。気のせいですか?」
涙で濡れた顔をあげると困った顔のエルが前にいた。困った顔も愛おしい。
杏はにっこり微笑んだ。
もうエルは二度といなくなったりしない。
忘れていたってかまわない。
だってもうあなたは天使でも堕天使でも、もちろん悪魔でもない。
大罪を犯して堕ちてしまった人間なんですもの。
「今日、仕事が終わったら会えないかしら。もう一度ここで。」
「あ、はい。分かりました。」
その時に話してあげる。天使と運命の人の話よ。二人だけの秘密の話。
まずはそうね。約束のハンバーグ作らなくっちゃね。
同じ席で同じものを頼む。馬鹿みたいと自分で思うのだけど。
それでもあの日、エルが消えてしまった日から毎月欠かさず来ていた。
きっとあの時にはもう堕ちていた。
だって私たちはりんごを食べたんだもの。アダムとイブのりんごを。
天にも届きそうな大木の下で。
そして今から向うレストランの名前は「Heavenly」だ。
レストランに行くとその席はすでに他の人が座っていた。
背が高くスーツ姿のその人はレストランに似つかわしくない豚カツ定食を食べていた。
確証があったわけじゃない。
ほとんどがただの願望で…だけどそうじゃなきゃおかしいじゃない。
だって私は明日には三十歳を終えてしまう。
「エル…。」
そうつぶやくとその人は顔をあげた。
「え?」
変わらないその顔は人畜無害そうな、それでいて実はオオカミを隠している顔だった。
「ううん。松永智哉。」
「ど、どうして僕の名前を?」
驚くその人は鞄と資料の入った紙袋を座っていない椅子に置いていた。
あの時と同じ…。
微笑みながらそれをどけるとその席に座る。
感動の再会だもの。泣いたりしないわ。
そう思っていたのに涙が溢れる。
杏の向かいに座るエルはあたふたしているのが、うつむいていても分かった。
「あの…。よく分からないけど、泣かないで。あなたが泣いていると何故か胸が痛いんだ。どこかでお会いしたような…。気のせいですか?」
涙で濡れた顔をあげると困った顔のエルが前にいた。困った顔も愛おしい。
杏はにっこり微笑んだ。
もうエルは二度といなくなったりしない。
忘れていたってかまわない。
だってもうあなたは天使でも堕天使でも、もちろん悪魔でもない。
大罪を犯して堕ちてしまった人間なんですもの。
「今日、仕事が終わったら会えないかしら。もう一度ここで。」
「あ、はい。分かりました。」
その時に話してあげる。天使と運命の人の話よ。二人だけの秘密の話。
まずはそうね。約束のハンバーグ作らなくっちゃね。