君とゆっくり恋をする。Ⅰ【第1話 〜第5話】(短編の連作です)
「……芹沢くんが担当してた岸川コーポレーションとの取引は、打ち切りになったみたいね」
「先月、芹沢くんが何日かインフルエンザで休んだことがあったでしょう?そのときに、岸川で不慮の事態があったらしくて、ウチの対応に不手際があったみたいなのよね」
「それじゃ、芹沢くんのせいじゃないよね?どっちかといえば、課長や代わりに対応した人が悪いんじゃない」
「でも、その後のフォローは、やっぱり芹沢くんにも責任があるでしょう?芹沢くんにしては、ありえない失敗したわね」
オフィスの中のどこからか、そんな声が囁かれて、結乃の耳にも入ってくる。
結乃は居ても立っても居られなくて、課長のデスクへ駆けつけた。
「とんでもない失敗をしてしまって、ご迷惑をおかけし、申し訳ございませんでした」
不機嫌そうな課長に対して、深々と頭を下げる。
「なんとか、今日の話し合いで説得して、繋ぎ止めたかったんだけどね。あんなことが起こったら、話し合いどころじゃなくなるよね……」
と、チクリと小言を言われても、結乃はただひたすら何度も頭を下げた。