君とゆっくり恋をする。Ⅰ【第1話 〜第5話】(短編の連作です)
敏生はため息をついて、自分のデスクに引き戻した。コートを脱いで、机上にあるパソコンを立ち上げる。
「明日のコンペって、どこでやるどんなものなんだ?」
「…えっ、あっ!ちょっと待っててくださいっ!!」
と、河合は説明するために、自分のパソコンを敏生の隣にまで持ってくる。その間、敏生はスマホを取り出して、結乃へメールを打った。
「…お前…、人の恋路の邪魔しやがって、タダで済むと思うなよ……」
ポツリとつぶやいた敏生の言葉を、河合は聞き取れなかったらしく、
「…はいっ?先輩、何か言いました?」
と、焦った様子で覗き込んでくる。
「なんでもない。いいから、説明しろよ」
敏生はぶっきらぼうにそう言うと、いつもの優秀な営業マンの顔になった。