君とゆっくり恋をする。Ⅰ【第1話 〜第5話】(短編の連作です)
――……私も配属されたのが、営業1課だったらなぁ……。
営業部にも、一般職の女子社員はいる。営業部は活気があって、和気あいあいとチーム一丸になって、みんなで頑張っているようなイメージがある。そこにいる女の子たちと、敏生はどんなふうに関わっているんだろう……。
せめてもの救いは、敏生が高校時代と変わらず、女の子と仲良くするタイプではないということ。噂話が大好きな総務部の女子たちからも、敏生が誰かと付き合っているという情報は聞こえてこない。
それでも、出会いの場は職場だけではない。優良企業の総合職で花形の営業をしているとなれば、合コンでも引く手あまたで、敏生は相手に不足することはないはずだ。もしかして、社内のみんなが知らないだけで、もうすでに彼女なんかもいるのかもしれない……。
それを思うと、結乃の胸の奥がチクンと痛む。
こんな感覚に冒されるのは、やっぱり敏生のことが好きなんだと、結乃は思った。