君とゆっくり恋をする。Ⅰ【第1話 〜第5話】(短編の連作です)
入社式の日、バッタリと結乃に出会った時、彼女は敏生が高校の同窓生だと気がついたようだった。
敏生の方は、驚きのあまり何も反応できなかった。だけど、敏生の心はその瞬間に、目まぐるしく動き始めた。
それから、高校生の時には微妙で曖昧だった感覚が〝恋〟だということは、すぐに自覚できた。結乃に再会できたのは、本当に奇跡だと思った。
想いは自覚しても、結乃との関係を進展させたい…などという発想は、敏生の中に生まれなかった。
ただ、社内で時折結乃を見かけるだけで、胸がいっぱいになって…。自分の感情の処理の仕方なんて分からなかった。