君とゆっくり恋をする。Ⅰ【第1話 〜第5話】(短編の連作です)



そこで敏生は、〝3時のおやつ〟の時間を前に、実力行使に出ることにした。

それまでにもらったチョコをかき集めて給湯室へと持っていき、そこのテーブルの上に盛ると、『ご自由に、食べたり、持ち帰ったりしてください』と張り紙をした。


その意思表示をした瞬間、女性達の自分を見る目が変化したことを、敏生はちゃんと感じ取っていた。自分が失礼なことをしているのは、重々承知の上だ。
でも、ここまでの意思表示をすれば、さすがに来年のチョコの数は激減するだろう。

なんと言われようが構わなかった。敏生がほしいのは、ただ一つ結乃からのチョコだけだった。



それから、段取り通りに仕事をこなし、定時には帰れる見通しが立った。心を逸らせながら、席を立って帰ろうとしたところ、


「…せ、芹沢先輩!助けてください~!!」


と、河合から呼び止められた。

厄介なことに巻き込まれそうな直感が働き、敏生は適当にあしらって帰ろうとしたのだが、河合はもう必死で敏生を離してくれなかった。


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