君とゆっくり恋をする。Ⅰ【第1話 〜第5話】(短編の連作です)

・ 近づきたい…。




敏生へのこの想いを自覚した時からの一方通行……というより、敏生は結乃の想いに気づいてくれているのだろうか……?

敏生とは大学は別々だったものの、奇跡のような偶然が働いて、今の会社で再会できた。でも、敏生は営業部のエリート。結乃は総務部の目立たない事務職員。接点などほとんどなかった。けれども、そんな状況でも何年も同じ場所にいれば何度か顔を合わせることもあって、同じ高校の同級生だったことは敏生も知ってくれていた。

それから、結乃は一念発起し、勇気を出して、敏生にバレンタインデーのチョコを渡した。そして、その一か月後には、敏生からホワイトデーのお返しをもらった。


……それが三か月前の出来事。あれから社内で敏生の姿をチラリと見かけることはあっても、言葉も交わしていない。ましてや、敏生からメールが来ることもなかった。


そもそも、イケメンでエリートで、モテすぎている敏生にとって、バレンタインデーでチョコをもらうことなんて、取り立てて意味のあることではないのかもしれない。ホワイトデーでお返しをくれることも、完璧に仕事をこなす敏生だから、ただの義務を果たしただけなのだろう。


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