失礼男の攻略法
「人の話、盗み聞きしないでもらえます?」
抗議をすると、向かいの席から私を飛び越えて
「あ、真人さんじゃないですか」
お兄ちゃんが、その失礼な男に声をかけている。このラウンジの会員ってことはほとんどが顔見知りだとは思うけど、わりかし親し気だ。
「なんだ、隆太郎じゃん。出来の悪そうな妹で大変だね~」
私の方にチラリと視線を向けて、またもや失礼なことを言う“真人さん”とやら。
「初対面の人との口の利き方も知らないような失礼な人に“出来の悪い”なんて言われたくありません」
ツンとして言い返すと、真人さんと呼ばれた人と一緒にいる男性が焦ったように
「真人さん。いきなり失礼ですよ」
と声をかけている。どうやら連れはまともらしい。そのはっきりとした顔立ちの男前さんに、味方してくれてありがとう、という意味を込めて会釈すると
「ほら藤木。お前そんなんだから、また勘違い女になつかれちまうぞ。そうなったら、俺としてはありがたいけどさー」
なんて言っている。