失礼男の攻略法
トントン
私の執務室のドアを叩いたのは田尻先生。
大学在学中に司法試験に受かったけど、頭デッカチでかたくなだった私に厳しい実務の現実を教えくれた私の師匠だ。
「もう出れる?」
「あ、すみません」
本当は私から伺わないといけないのにと思いながら急いで荷物をまとめると
「すぐ下だからそんな急がなくていいけど」
ふふっと笑って優しい言葉をかけて下さる。仕事柄、自信たっぷりな人とか横柄な人が多いこの業界で珍しく、人柄も素晴らしい。そういう意味でも尊敬している。エレベーターまで並んで歩きながら
「今回の案件、訴訟でなくって、制度整備なんですよね」
今日から新しく担当することになった案件について念のための確認をすると
「うん。でも、社長はノリ気じゃないみたいなんだよね」
不穏な言葉を掛けられる。