失礼男の攻略法

すると心底不思議だ、という顔で

「どっちって?」

平坦な言葉を返される。一瞬言い淀んでしまったけど、もう声に出してしまったものは仕方ない。この際だからと、思ったことをそのまま口にした。

「初対面の時みたいな、すんごい感じ悪いのと、人の気持ち全部わかってるみたいな、包み込んでくれそうな優しさと」

じっと失礼男から視線をはずさずにそう言うと、珍しく向こうから視線を外されてしまった。そして

「どっちでもないよ」

小さな声が聞こえてきた。

聞き逃さないように、ん?という風に耳を向けると

「どっちでもないって言ってんの。俺は、その時俺がしたいようにしてるだけ。それを千秋が勝手に解釈してるだけだろ?」

今度ははっきりと聞こえるように言われる。勝手に解釈、と言われると確かにそうで・・・。

私が一番されたくないようなことをしてしまっていたのだと申し訳なくなって、

「ごめんなさい」

頭を下げて謝ると

「あー、なんでそうかな」

自分の頭をくしゃっとかきまぜている。
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