失礼男の攻略法
「えっ、今日ってその社長も同席なんですか?」
「そう。だから、その辺も含めて千秋先生の腕の見せ所?」
ちょっとおどけたように言っているけど、きっと田尻先生としては経験として自分で一旦やってみろ、という親心みたいなもんだろう。
もともと、これから行く企業の顧問をしている田尻先生。これまではM&Aとか企業間の案件を請負っていたけど、今回は私の得意分野の労務管理について依頼が入ったので私に話がきたのだ。本当は抱えている案件で手一杯だったものの、依頼主が業界でも話題の大手IT企業だったし、なにより田尻先生から直接頂いた話だったので二つ返事で引き受けた。
だけど、そう判断した自分をタイムマシーンで戻って止めたい、そんなバカみたいなことを思ったのは会議室に入った瞬間だった。