失礼男の攻略法
何て言えばいいんだろうって固まていると、そっと密着していた身体を離されて顔を覗き込まれた。
その眼差しが、あの日ラウンジで私が一瞬で恋に落ちてしてしまったものと同じで・・・・。
「なりたいです。あなたの、真人さんのお嫁さんになりたいです」
すんなりと言葉が口から出てきた。
そして口に出してから、ようやくわかった。直樹さんとの結婚を決めきれなかった理由が。
私は諦めたって思いこみながらも、ずっと望み続けていたんだ。この失礼男のことを。
結婚するなら、恋したこの人がいいんだって。
そのことに気付いたら、今この瞬間がすごく奇跡に思えて、涙が込み上げてくる。それを抑えることなんてできずに、さっき初めて触れたガッシリとした胸元に頭を押し付けると
「なに、うれし泣き?」
いつものような軽い口調で笑われてしまった。
こんなときくらい甘やかしてくれてもいいのにって思うけど、この人の子どもみたいなところも好きなんだよなって思うと、自然と口元が緩んでしまう。
「そう、うれし泣きです」
負けずに私もおどけてみると
「それならよかった」
と言って、唇が私の唇めがけて降りてきた。