失礼男の攻略法

「その時なんだよ、強烈にお前のこと欲しいって思ったの。今思うと、人としてとか女としてとか、そんなのどうでもよくって、俺が西田千秋って人に落ちた瞬間なんだよ」

そんなことを、そんな熱い眼差しで言われたら、もうどうしようもない。自分からギュッと横にいる失礼男に抱き着いて

「好きなんです」

って呟いていた。

ギュッと強く抱きしめ返してくれる男の腕の中は、すんごく安心できて、既に馴染んでいる場所のようにさえ思える。

「ほんと、かわいいよ」

そんな言葉に幸せに浸っていると

「でも、お前が結婚するかもって言った時、かわいさ余って憎さ百倍ってこのことかって人生で初めて体感したよ」

なんて言われるから、ギクっとしてしまう。

恐る恐る見上げると、そこにはニヤリと笑っている顔があって。

「まぁ、そのおかげで本気出したんだけど。お前に先にプロポーズしたってヤツもマヌケだよな。過保護な父親と兄貴丸め込んだ方が勝ちに決まってるのに」

なんて言い始めるからムードが台無しだ。
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