失礼男の攻略法



「本当に申し訳ありません」

52Fのラウンジで私が頭を下げている相手は直樹さんだ。

「いやさ、なんか話が急展開過ぎてついていけないんだけど」

困惑気味にそう話す直樹さんに、そうですよね、と同意したくなる。だけど、そんな他人事のように話している場合でもなくって。どうやって納得してもらおうか、頭を悩ませていると入り口から最近ようやく見慣れてきた、イイ男が入って来るのが見えた。

そして真っすぐ向かって来たかと思うと、おもむろに私の頭に手を置いてホッペにキスを落とす。

この人の過剰なスキンシップに徐々に慣れてきたものの、人前でされるのは話が別だ。

「ちょ、いきなりやめよ」

「えー、いいじゃん。今日もかわいいね」

甘々の目線でじっと見られると、だらしなく口元が緩んでしまうのは許してほしい。

「あのさ、紹介してくれる?」

呆れたような直樹さんの声でようやく、この場が非常にまずいことに気付いた。
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