失礼男の攻略法
「今の時代、過労死まで行かなくても鬱で退職した方からの訴えも増えています。訴えられた時のダメージは、報道でも出ているのでご存知かもしれませんが、企業イメージの悪化だけでなく、関係者の法的処分、裁判への対応、取引企業からの一定期間の取引停止などトータルコストは非常に高いです。そこをご理解されたうえで、必要ないとおっしゃられるなら、こちらとしては無理にとは申しません。御社内で今一度、ご検討願えますか?」
最後ににっこりと微笑んで、手元の資料を片付けつつ失礼男とそこに並ぶ社員の方をゆっくりと見渡す。
「わかった。じゃあ、うちにとってプラスになるか案をいくつか出してくれ」
さっきまでの態度から一変、前向きな姿勢に変わった。
これくらいの話で納得するなら、最初から無駄にごねるなよ、と心の中で毒を吐きながら、片付け始めていた資料を、先方に配った。
「こちらで御社の労働状況に合わせて法的に問題がない事例をお持ちしています。1つは訴訟が起きた際のリスクをつぶす最小限の案で、もう一方は訴訟にまで至らないようにするケースです」