失礼男の攻略法
資料に目を落としている失礼男の反応を伺いながら
「とはいえ、どちらも雇用条件の再検討の必要があるので、まずはそちらの方向性の決定をお願いします」
こちらが言わなければならないことは全て出し切った。
隣の田尻先生は特に何も突っ込まないので、おそらくここまでの説明は悪くないはず。しばらく何も言わずに見守っていると、資料を読み終えたのか、ペーパーを机にぽいっと投げる失礼男。
いちいちムカつくな、と思いながら言葉を待っていると
「こんな他社の事例だされてもねぇ。せっかくやるなら、リスク回避みたいなつまんないことじゃなくって、うちが国内で一番の優良企業って言われるようなのにしてよ。必要ならうちのスタッフとやり取りしてさ」
人を試しているような眼差しとふざけたような口調で投げかけられる。これは仕事だ、ともう一度自分に言い聞かせて息を大きく吸い込んでから
「かしこまりました」
その一言を精一杯明るく声に出し、今度こそ、この場を後にする準備を整える。