失礼男の攻略法
私たちの父、山岸慎太郎はこのビルに入っている世界三大コンサルのうちの1つYGカンパニーの経営者だ。
世界的に影響を及ぼす会社なだけあって、小さな頃から周囲の大人にも子どもにも色眼鏡で見られることが多くって。
「さすが山岸のお嬢様」
それが嫌味なんだと気付くようになったのは小学生くらいの頃だろうか。
できなかったら「山岸さんところの子なのに」と言われ、逆にどれだけ自分が頑張っても「ほら、山岸さんのところの娘さんだから」の一言で、努力もなかったかのように扱われる。
そんな周囲の反応に落ち込む度に、真っ先に気付いてくれて、ずっと頭を撫でてくれたのは兄だった。
「千秋が頑張ってるのは俺が知ってる。頑張れる千秋が大好きだよ」
そう言い続けてくれた兄がいたから、私は腐らずに、むしろ周囲の期待を超えてやろうと頑張り続けることが出来た。
きっと“山岸の後継者”として私なんかとは比べものにならないくらいのプレッシャーがあった兄なのに、いつも前向きでひょうひょうしている姿は小さい頃、憧れだった。