失礼男の攻略法

ただ縁談の裏側にあった所長の意図だけじゃなくって、これまでの事務所での評価も否定された気になって自嘲気味に笑うと

「なるほどねーそのちっさい身体に、色々背負わされてるんだ」

失礼男の言葉が耳に入る。

その言葉に今度こそ温度を感じて、失礼男に目を向けると失礼男の眼差しにも温度を感じる。あったかい、いたわるような、そんな言葉と眼差し。

それを受け止めたとたん、どうしようもなく泣きたくなった。

でも、いい大人がこんなとこで泣くわけにはいかない。そんなわずかに働いた理性で、こぼれそうになる涙をこらえていると

「そんな気張ってばっかりじゃなくってもいいんじゃない」

言いながら男の腕が伸びてきて、さらりと私の頭を撫でた。

その、いやに優しい手のぬくもりを感じたら、もう我慢できなかった。


ただ、ポロポロと涙がこぼれていることを頭では理解しながらも、目の前にあるあったかい瞳を見つめていることしかできなかった。



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