不知火の姫
――――チリン、と鈴の音がしたような気がした。
気が付くと私は、自分の部屋のベッドで寝ていた。
窓に引かれたカーテンからは外の光がこぼれていたけど、今が朝なのか昼なのかは分からなかった。
……私、どうしたんだっけ?
とりあえず起き上がろうとすると、ズキンと頭が痛んだ。
『――――疫病神!』
ああ、そうだった……
昨夜の記憶が蘇る。
私、階段から落ちて、それで…………
もう一度、体に力を入れて半身を起こした。起きてみると、ベッドの端に寄りかかるように、葉月が寝ている。
もしかして、ずっと着いててくれたのかな……
手を伸ばして髪に触れる。サラサラだ。それに、小さな子供みたいな寝顔。
また、守ってくれた……
葉月はいつも、私を守ってくれる。
それが何だか嬉しい。
「…………ん」
髪を触りすぎたのだろうか。葉月が目を覚ましてしまった。
私は慌てて手を引っ込めた。
「――――鈴! 大丈夫か?!」
目が覚めた葉月は、がばっと私に近づいた。