不知火の姫


「――――本当だよ! あず、嘘なんかついてない! 鈴ちゃんは、ずっとあずを……!」


愛澄ちゃんはそう叫んだ。そして私にくるりと振り返ると、ぼろぼろと大粒の涙を流す。


「ずっといじめられてたの。初めは、教室の机に手紙が入ってた――――不知火から消えろ、って……」


ぐずぐずと泣きながら愛澄ちゃんは話し始めたんだけど、それって……


「次は、教科書とかが無くなったの。上履きとかジャージとか、どんどん無くなって……」


愛澄ちゃんの話しているそれって、全部私がされていた事だ。でも、どうして彼女はそれを知っているんだろう。

私、志貴にしか話してないのに……


「……ずっと我慢してたの。鈴ちゃん、不知火で楽しそうだったし……あずが我慢してれば、そのうち止めてくれるだろうって…………」


何? 何を言っているの、愛澄ちゃんは……


「でも、盗られたもの買ってたらお小遣い無くなってきちゃうし……これ以上、もう我慢出来なくて…………」


それだけ言うと、愛澄ちゃんはうわーんと大声で泣いた。




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