不知火の姫


『――――あいつ、そんな性格悪かったのか?』


――――ドクン、と心臓が音を立てる。


『――――施設で育ったから』

『ずっといじめとかやってたんじゃね?』

『可愛い顔して、最悪だな』


下の人たちのひそひそとした声が、嫌によく聞こえる。みんな私を疑い始めていた。


……ほら、やっぱりそうなんだ。

誰かを信じると、必ず裏切られる。




そんなの分かっていたのに、どうして信じてしまったんだろう……

違うって言いたいけど、きっと誰も私なんか信じてくれないんだ。




もう、ほとんどあきらめていた。

やっと信じられる仲間が出来たと思っていたけど。やっぱり同じなんだと。だから私は何も言わなかった。

これ以上、心が痛くなりたくない……



「――――お前、嘘つくなよ!」


大きな声でそう言ったのは、志貴だった。


「その話、全部僕、鈴から聞いた! 鈴が誰かにそうやっていじめられてるって! 愛澄! 嘘つくなよ!」




< 133 / 275 >

この作品をシェア

pagetop