不知火の姫
『――――あいつ、そんな性格悪かったのか?』
――――ドクン、と心臓が音を立てる。
『――――施設で育ったから』
『ずっといじめとかやってたんじゃね?』
『可愛い顔して、最悪だな』
下の人たちのひそひそとした声が、嫌によく聞こえる。みんな私を疑い始めていた。
……ほら、やっぱりそうなんだ。
誰かを信じると、必ず裏切られる。
そんなの分かっていたのに、どうして信じてしまったんだろう……
違うって言いたいけど、きっと誰も私なんか信じてくれないんだ。
もう、ほとんどあきらめていた。
やっと信じられる仲間が出来たと思っていたけど。やっぱり同じなんだと。だから私は何も言わなかった。
これ以上、心が痛くなりたくない……
「――――お前、嘘つくなよ!」
大きな声でそう言ったのは、志貴だった。
「その話、全部僕、鈴から聞いた! 鈴が誰かにそうやっていじめられてるって! 愛澄! 嘘つくなよ!」