不知火の姫
「あず、嘘なんてついてない! 嘘ついてるのは鈴ちゃんだよ! 志貴くんは騙されてるんだよ! その証拠に、鈴ちゃん否定しないじゃない!」
愛澄ちゃんの言葉に、みんなが一斉に私の方へ視線を向けた。
――――私、ここで何を言ったらいいの?
やってない、って言ったら、信じてくれるんだろうか。
怖い…………
信じて欲しいけど、もし信じて貰えなかったら……
「――――俺は鈴を信じる」
ざわざわした中に響いたのは、隣にいる葉月の声だった。
「鈴はずっといじめられてきたんだ。それで誰も信じられなくて、笑う事も忘れてた。そんな奴が誰かをいじめたりするかよ」
葉月…………
葉月が信じてくれた。
それが嬉しくて、嬉しすぎて。
「葉月……」
ありがとう、って言いたかった。でも、泣きそうで。名前を呼ぶだけで精一杯。
葉月は私の手を、ぎゅっと握ってくれた。