不知火の姫
「ふざけるな! じゃあ、昴の事も騙してたって言うのか!」
「ふざけてないわよ。それに、昴くん? ん~どうかなぁ……?」
愛澄ちゃんは人差し指を顎に当て、わざとらしく考える真似をする。
「――――騙されてたかどうかは、もうすぐ分かると思うよ?」
彼女がそう言ったのとほぼ同時に、店の入り口が大きな音を立てて開け放たれる。そして人が一人、飛び込んできた。
……飛び込んできた、というより、投げ込まれたと言った方がいいかもしれない。
横たえられた体はボロボロで、かなり殴られたみたいな跡が。顔は腫れあがり、口や鼻から血が流れている。
「――――中村!」
志貴が叫んで駆け寄ろうとする。どうやら志貴の配下の人みたいだ。
でも彼がたどり着く前に、外から入ってきた男に、その中村さんは蹴り飛ばされた。まるでゴミを蹴飛ばしたみたいに。
「――――遅くなって悪かったな、愛澄」
そう言ったのは……