不知火の姫
不知火が内部抗争を始めたという話は、瞬く間に広まってしまった。何処から漏れたのかは分からないが、こういう噂は得てしてそういうものだ。

昴さんは学校が違うから分からないが、彼に賛同した第二特攻隊の人たちも、蓮さまも愛澄ちゃんも、次の日から登校しなくなった。


――――昴さんが旗揚げした『鬼焔(きえん)』


彼らはファントムにほど近い倉庫にその陣を構えたと、光流さんから聞いた。明らかに、不知火を意識したものだった。

不知火を潰すと宣戦布告した鬼焔。しかしその動きは、いまだ無かった。それがみんなの不安を煽っている。





葉月は、酷く落ち込んでいるようだった。仲間に裏切られ、それに……


一番信頼していた蓮さまにも、裏切られた。


その心の痛みは、私には想像も出来ない。

あんなにお互い大切に思っていた二人だったのに。蓮さまはどうして葉月を裏切るような事をしたんだろう。

あんなに優しかった蓮さまが……どうして…………

ただ暴れたかった、と言っていたけど、本当にそれだけが理由なんだろうか。

考えても考えても、私には分からなかった。




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