不知火の姫
…………どのくらい、歩いただろう。
湯飲みを買ってくるとは言ったけど、行先なんて無かった。お財布も持ってない。
雨はずっと降り続いていた。
傘も持たずに飛び出してきてしまったから、もうずぶ濡れで。とうとう私は、何処か分からないコンビニの前で座り込んでしまった。
私と葉月が兄妹なんて…………
本当なのかな……
美乃利さんはお酒を飲んでいたみたいだし、私の事が嫌いだからあんな事を言ったのかもしれない。
でも……
私の母親が小鳥遊のおじさんの浮気相手だとしたら、あの夜に美乃利さんが叫んでいた言葉の意味が分かる。
あの夜――――私が階段から落ちた夜……
『あんたもあの女と同じね! うちをめちゃくちゃにして……!』
『あんたもそうなんでしょ?! うちをまた壊しに来たんでしょ?!』
あの女っていうのが私の母親の事だったのかもしれない。
そう考えると、全部に納得が出来る。