不知火の姫


――――どうして美乃利さんがあんなに怒っているのか。

どうして小鳥遊のおじさんが、私の里親になってくれたのか。




どうしよう……どうしたら、いいんだろう…………


葉月は……葉月は知っているんだろうか。彼なら知っていたら教えてくれたはずだ。

だから、たぶん彼は知らないと思う。

小鳥遊のおじさんに確かめればいいんだろうけど。

でも知るのが、怖い。




だって私は…………


葉月を好きになってしまったから。





涙が頬を伝う。でも雨に濡れて、それが涙なのか雨なのか、分からなかった。










「――――鈴ちゃん……?」


どのくらい座っていただろう。突然頭上から名前を呼ばれ、顔を上げた。

そこに立っていたのは――――


「…………蓮、さま……?」


何故か着物姿で傘をさしている、蓮さまだった。




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