不知火の姫
『不知火の姫と鬼焔の姫の秘密会談。ちょっと面白いと思わない? あ、あたし今、鬼焔の姫なの』
愛澄ちゃんの目的が分からない。まだ私の事がいじめ足りないというのだろうか。
「……私、不知火の姫を辞めたの。話す事なんて、無いから」
『そうなの?! びっくりぃ~! でも、やっぱりお話したいなぁ……そうだ! あたし、鈴ちゃんと同じ施設にいたの。……こう言えば、少しはその気になってくれる?』
愛澄ちゃんが、施設にいた?!
前に彼女の親は、何処かの食料品メーカーの社長だと聞いていたのに。でも施設にいたって事は……?
しかも私と同じ施設にいたなんて、どういう事なんだろう。
『学園とファントムの間に、希望の丘公園っていう公園があるでしょ? 今からすぐ来て。もちろん一人で来てね、あたしも一人で待ってるから』
愛澄ちゃんはそう言うと、携帯を切ってしまった。私はベッドから出ると、すぐに出かける準備を始めた。