不知火の姫
「じゃあ、改めて……――――鬼焔の倉庫へようこそ~!」
愛澄ちゃんは両手を広げて満面の笑み。
隣にいる昴さんも、取り囲む鬼焔の人たちも、にやにやと嫌な笑顔を浮かべている。
「……どうして、こんな…………」
「強引に連れてきちゃって、ごめんねぇ? でも仕方が無かったの」
「――――お前は不知火戦の為の、人質だからな」
愛澄ちゃんの言葉を引き継いだのは、昴さんだった。私を明日の不知火との戦いに使うつもりなんだ。
また、不知火のみんなに迷惑をかけてしまう。
葉月にも……
「……人質にはならないよ。私はもう、不知火の姫じゃないから」
私はもう、姫を辞めたんだ。もともと『かっこかり』だったけど。
だから、不知火への武器にはならない。精一杯虚勢を張ってそう言ったけど、昴さんも愛澄ちゃんも笑っているだけだった。
「そうだね、そういえば鈴ちゃん姫を辞めたって言ってたね。だけどね、本当はあたしにはそんな事、どうでもいいの。昴くんたちは、鬼焔にも都合がいいから協力してくれただけ」