不知火の姫
「……ど、して……どうして、こんな事するの……?」
「何度も言ってる。あたし、あんたが大っ嫌いだから」
「でも、私…………」
「こんな事される覚えは無い? ――――だったら、教えてあげる」
愛澄ちゃんはそう言うと、昴さんに何か耳打ちした。
すると彼の号令で、鬼焔の人たちが全員、倉庫を出て行く。残ったのは、私と昴さんと、愛澄ちゃんだけ。
拘束は解かれたけど手を縛られているから、私は起き上がる事は出来なかった。
「昴くんに人払いをしてもらったの。あんまり他の人には聞かせたく無い話だからね……」
『何処から話そうか?』彼女がそう言うと昴さんは愛澄ちゃんから少し離れた所にあった、積まれて朽ち果てている木材に座った。
「……鈴ちゃんは、あの施設で同い年だったのは、あたしだけだって知ってた?」
……知らなかった。
子供はたくさんいたから、一人ひとりの正確な年齢までは把握してはいなかった。
「その顔じゃ、知らなかったみたいだね」
愛澄ちゃんは話しながら、コツコツとゆっくり、私の周りを歩き出した。