光の国
記憶
あの二人の女子高生の話を聞いてから1ヶ月経った。
もう私はそんな噂を聞いたことすらもう遠い記憶のように忘れていた。

そんなある日、私はいつものように家の近くの公園で花壇を眺め、夕方になり家に向かって歩いていた。
空はちょうど夕陽に照らされてオレンジ色を辺り一面に撒き散らしていた。
近くで犬の鳴き声が聞こえる。
鳴き声の聞こえた方を向くと小学校低学年位の女の子と恐らくその子の飼い犬であろうゴールデンレトリバーがボールで遊んでいた。

「なんか私とスマイルみたい!」

そんな事を思いながら微笑ましくその女の子とゴールデンレトリバーを見ていた。
その時、ビューっといきなり突風が吹いた。
同じタイミングで女の子が投げたボールが風に乗り先程よりも高い位置で飛んでいった。
そう、車道の方に。
私が「あっ!」と声をあげる間もなくゴールデンレトリバーがボールを追いかけ走っていく。
車道の先の方からはトラックが走ってきていた。

私は静かに様子を伺う。

ゴールデンレトリバーがボールに追い付いた時、もうトラックは目の前で。
しかも運転手はゴールデンレトリバーに気づいていない。
私も女の子も「危ない!」そう思った。
今、思えば女の子は一生懸命、ゴールデンレトリバーの事を呼んでいたと思う。

私はいつの間にか走り出していた。
大人の足と私とゴールデンレトリバーの距離なら間に合うかもしれない!そう信じて。

私がゴールデンレトリバーを抱き庇い、トラックが急ブレーキを踏んだのはほぼ同時だった。
ドン!と言う衝撃の後、私は眩しい光に包まれた。
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