いつの間にか、溺愛。
こんな展開、誰が予想したことか。

「ってことで、携帯出して?」

「……あ。は、はい」

あれよあれよで、私の携帯には彼の番号に『戸高 蒼』ときっちりフルネームまで。

「……そうくん?」

「うん。好きなように呼んで?名前は鈴ちゃん、っと。てか歳上なのに鈴ちゃんって……」

「?」

「いや『鈴さん』のがいいのかなーって?」

悪戯な笑顔からは、少し腹黒さが感じられた。

「っ!?嫌!それだけは嫌!お婆ちゃんみたいって言われた事あるから!」

「ははっ、冗談だよ。ジョーダン!」

『お鈴さん』とからかわれた幼少期のせいで、あまり好きではないこの名前。

「むしろ『ちゃん付け』も子供っぽく見られるから呼び捨てにして下さい」

「ん?………鈴っ?」

きゅん。

あ、自分で言っておきながらドキってしてもうた。

干からびてると名前呼ばれただけで胸キュンするんだな。

「……いや、それもそれで恥ずかしい、かも。」

「ふ、ははっ、色々と忙しいね?」

「もう、お好きに呼んでください……」

隣で陽気に笑う彼は何だか楽しそうだ。
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